アフリカ大好き・りさぴょん(@LisapyonKenya)です。
今日は現職の草の根外部委嘱員のお仕事について説明します。
私は2021年2月に在ジンバブエ日本大使館の草の根外部委嘱員を受けて採用され、2021年4月に着任しました。
https://partner.jica.go.jp/RecruitDetail?id=a0L2t00000189IxEAI
草の根とは?
まずは、草の根委嘱員が担当する「草の根」とは何か。
草の根・人間の安全保障無償資金協力(以下「草の根無償」という。)は、人間の安全保障の理念を踏まえ、開発途上国における経済社会開発を目的とし、地域住民に直接裨益する、比較的小規模な事業のために必要な資金を供与するものです(供与限度額は、原則1,000万円以下)。
在外大使館がその国のNGOや行政に対して、最大1000万円の助成金を出しています。草の根無償の助成は主にインフラ、そう建物がメインです。
英語では、Grant Assistance for Grass-Roots HumanSecurity Projects と呼んでいるので、GGPと略しています。
主に学校や病院への支援が多く、学校だと校舎と椅子・机。病院は、新しい産婦人科の建物を増設とか。、井戸の掘削など、ハード面の整備が中心です。草の根無償は、残念ながら、ソフトコンポーネントには出せなくて、「女性のエンパワーのために活動費をください」とは採用できないんです。人件費や消耗品は買えないのです。
草の根無償の予算は国ごとによって、外務省(本省)から割り振られています。ジンバブエは小さい大使館なので、年間6件程度です。しかし、大きい大使館や草の根に力を入れている大使館であれば、20件もあります。
ジンバブエの場合は、草の根委嘱員は、私一人です。現地職員として草の根担当を採用することもありますが、ジンバブエにはいません。カンボジアの友人に聞いたところ、カンボジアでは草の根外部委嘱員が4人いて、さらに現地採用の草の根担当者が4名いるそうです。これは①予算がカンボジアの方が多い、②クメール語を話せる現地職員が必要という2点で差があるようです。ジンバブエでは公用語が英語なので、NGOの人が英語を話せるので、通訳がいりませんが、東南アジアのように自国の言葉を持っている国では発展しているし、教育を受けているからと言って英語が話せるわけではありません。そのため、クメール語から英語に訳せる現地職員が必要です。
特定案件型草の根無償
草の根の中でも、特定の分野には追加で予算が出たり、上限1000万円がなくなります。
ジンバブエでは、「対人地雷対策」があります。特例の案件は、上限の1000万円を超える申請ができ、通常案件では対象にならない人件費や消耗品も購入することができます。1997年に「対人地雷禁止条約」(通称:オタワ条約)が作られて、2014年に世界中で2025年までに地雷をゼロにしようという目標を定めています。それに日本が積極的に支援しています。ジンバブエでは、5-6個のNGOが2025年までに地雷ゼロを目指して活動しています。実際活動しているので世界的に活動しているHALOですが、その活動を支援できるのは、日本人として、誇らしいなと思っています。
●在ジンバブエ大使館の草の根過去の例
https://www.zw.emb-japan.go.jp/files/100164480.pdf
●草の根無償、紹介ページ
仕事内容
1. 申請書のスクリーニング
NGOからメールや郵便で申請書が届きます。その内容を確認します。申請書が完璧というのは、今まで1団体した見たことはありません。そのNGOは過去に当館から数回助成金をもらったことあるベテランのNGOでした。ほとんどのNGOは、背景、問題、解決、アウトプットが論理的に書かれていません。それを一緒に話合ったり、確認していきます。また、採択するには、プロジェクト地を訪問して、本当にプロジェクトが実施可能であるのか調査します。普段は事務所仕事ですが、フィールドに行ける業務です。
- 類似のプロジェクト経験や他のドナーとの経験
草の根では、インフラしか提供できないので、「女性を支援するシェルターを建設」という案件であれば、これまでも女性支援をしてきた経験やノウハウがないと提供できません。そのため、できたばかりの団体や特定の分野の活動を全く行ったことがないが初めて行うというNGOは採択される可能性が低いです。また、ドナー側とすれば、他の大使館や国際団体から支援を受けた経験があると安心です。
- 経済的状況
草の根はインフラのみなので、マネージメント面は、自分の団体でカバーしないといけないので、全く資金がないという団体は支援できません。また、プロジェクト進行中に建設材料が高騰して、予定外の部分は団体がカバーしなければなりません。全く他のからの支援がなくて、支援してほしいという団体だと残念ながら、難しいです。
2.りん請の作成
在外大使館で、選考したら、外務省にりん請します。これは申請団体の申請書や調査を元に日本語で作成します。あくまで委嘱員は補助なので、大使館の職員の方が本省に提出してやり取りしてもらいます。委嘱員は調査と資料作成が担当です。
外務省特有の日本語の言い回しとかはありますが、昨年度の申請書を元に作成すれば、難しい作業ではないなと思っています。
3.採用団体と契約、銀行口座開設送金
本省から本採用と承認されたら、NGOとMoUを結びます。プロジェクトの契約書ですね。そして、草の根のプロジェクト用の口座を開いてもらい、そこに助成金を入金します。
通常プロジェクト期間は1年となっていますが、いろんなトラブルで1年で終わらないこともあります。送金して、建設が始まってからは、たまに連絡して建設はどう?問題ない?と連絡を取っています。中間報告書は出してもらっていますが、毎月レポート等を出してもらってはいないです。
4.引渡し式
建設が完了すると、団体に完了報告書と監査報告書を作成してもらい、引渡し式を行います。プロジェクト地に大使と一緒に赴き、セレモニーを行います。地方の学校建設とかの案件はお祭り騒ぎになるので、近所の人が集まって、みんなで踊ったりします。新型コロナウィルス感染症拡大後は、引渡し式ができておらず、メールや電話で完了報告を受けて、写真を送ってもらっています。
5.モニタリング
引渡し式が終わるとプロジェクト完了となりますが、2年後にフォローアップとして、訪問しています。ちゃんと学校が使われているか、病院に提供した機器が動いているか。
お気づきの通り、私は2021年4月にジンバブエに来ましたが、前任者が担当していた案件のモニタリングに行くことになります。これもフィールドに行ける貴重な機会で、他の地方出張と合わせて、モニタリングに行き、報告書を書きます。
https://www.mofa.go.jp/files/000071825.pdf
待遇
契約形態
外部委嘱員は大使館職員として雇用されるものではありません。草の根無償関連業務にかかる業務委嘱契約(一般型委嘱契約)を委嘱員として大使館と交わし、委嘱契約期間の間、同業務委嘱に対して大使館から毎月一定額の謝金が支払われます。雇用ではなく委嘱契約であるため、各種の待遇は適用されず、例えば,健康・傷害保険、年金、旅券取得、入国ビザについては個人で手配することになります。
草の根外部委嘱員は、名称に「外部」と付くだけあって、外交官や在外公館専門調査員と待遇が違います。
外交官扱いではないと何が違うの?
1. 外交官のID
現地政府から発行してもらうことがあります。IDがあると、車の購入で免税できたり、外交官のナンバープレートをもらえます。
→私は、免税できなかったので、税金も含めて車を購入しました。もちろん車にもよりますが、免税できるかできないかで、20-30万円くらい違うとおもいます。外交官のナンバープレートは検問で止められることはありませんが、他の人と同じ黄色のナンバープレートだと止めらえることもあります。
2. 健康管理休暇
外交官扱いだと、外務省の規定により、休暇を取ることができます。在外公館専門調査員は外務省の職員ではないですが、外交官扱いにしてもらえるので、他の大使館員のように年に2回休暇がもらえて公費で日本に帰国することができます。ケニアは健康管理は年に1回だそうですが、ジンバブエは年に2回です。住む環境がハードであれば、日本への帰国回数が増えるというわけです。
→委嘱員は業務委託なので、休暇という概念がなく、有給もありません。ポジティブに捉えると、業務さえ終わっていれば、いつ休んでもいいわけです。委嘱員は上司と相談して、日本に帰国したり、隣国に旅行に行くようです。まあ、他の職員に合わせて一回の休暇は1か月程度でしょうか。
謝金額
外務省の規定に基づき、国によって、謝金と住宅手当が変わります。また気を付けてなくてはいけないが、草の根委嘱員と行っても2種類あります。
1. 日本に住んでいる邦人向けの草の根のポスト
2. 現地に住んでいる邦人向けの草の根のポスト
日本から現地に移住して、草の根外部委嘱員になる人には、移転料、渡航費、住居費が出ます。しかし、現地で採用した法人に関しては、謝金のみです。かなり待遇が大きく違います。私はもちろん1で今回採用されています。
謝金と住宅費は国によって変わり、知人に聞いたところでは、こんな感じです。
アジアのとある国 20万円+住宅費(2200ドル)
アジアのとある国 18万円+住宅費(1900ドル)
アフリカのとある国 32万円+住宅費(2000ドル)
アフリカのとある国 42万円+住宅費(1600ドル)
私が驚いたのは住宅費の方が謝金のより高い国もあります。セキュリティー上とか、首都の不動産は暴騰しているとかが理由です。委嘱員がもらう住宅費はほかの外交官よりも少ないもののそんなに差がなく、かなりいい家に住めます。プールとジムがついていて、寝室が3つあるような集合住宅に住んでいる友人もいました。
私の場合は前任者から引きついて、庭付き一戸建てに住んでいます。みなさん上限いっぱいでいい家に住んでいます。でも、生活で大切なのは水と電気なので、家自身も大切ですが、停電が起きやすい地域とかは避けて引っ越ししたりする人もいます。
ちなみに私の謝金はほかの人より、2万円くらい多いと言われました。NGO経験が2年以上あると、基本謝金よりプラスされるようです。なんかどうゆう風に謝金が規定されているのかグレーなところは政府系っぽいですよね(笑)
↓国際協力界隈の給与が気になる方はこちらの記事もどうぞ。
このポジションに向いているのは
- 海外駐在経験を積みたい人
- 分野(教育、保健、インフラ)を問わずいろんな案件に触れたい人
- お金を貯めたい人
はい、私は正直のところ、「お金を貯めたい人」です。
仕事はいろんなNGOとの出会いがあり、面白いですが、私があくまでもプロジェクトを実施する人にはなれません。現地NGOには「ドナー」という扱いを受けて、「パートナー」にはなれません。
草の根委嘱員は、国際協力の中で、外交視点のODAです。そうゆう視点を知ることもひとつ。
とりあえず私が今までで一番給与高いポジションにいます。まあ、ジンバブエの謝金がすこぶるいいというのがあります。アジアの人たちは日本のNGO職員よりはいいけど、他の会社員よりは低いかもね。
ということで、草の根外部委嘱員について紹介しました。
アフリカ大好き・りさぴょん(@LisapyonKenya)でした。国際協力でキャリア相談したいという方がいれば、TwiterでDMください。
それではまた~。