アフリカ大好きりさぴょん(@LisapyonKenya)です!
今日は、ケニアで障害のある子どもたちのためにデイケアを提供しているNGO『シロアムの園』を創設して、代表をしている公文和子先生が執筆した本を紹介します。
2016年からシロアムの園について知っていて、講演会に参加させてもらったこともありましたが、2022年1月~2月にシロアムの園でボランティアをさせて頂いています。
この本を読んでからシロアムの園活動に参加したことでより深く活動の意味がわかった気がします。
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筆者・公文和子さん
公文先生は、日本人の小児科医です。日本に限らず、海外いろんなところでの経験をお持ちの方です。キリスト教徒の家庭で育ち、彼女もキリスト教徒です。公文先生の人生の中でキリスト教の存在は大きく、本の中でも公文先生とキリスト教の考えがどう結びついているのか、葛藤しているのかが書かれています。私自身は特定宗教を信じているわけではないのですが、世界の人口の77%がイスラム教、仏教、キリスト教、ユダヤ教、ヒンズー教を信仰していると言われる世の中で、公文先生が信仰するキリスト教をベースに、どのような考えを持って、JICAやNGOを仕事をしてきたのかはとても興味深い部分です。
また、シロアムでは代表として施設の運営を行いながら、小児科医として診察も担当されており、本当に多忙!!ボランティア中はお自宅に泊めて頂いてましたが、朝3時に起きて、可愛い娘さんのお弁当や私の朝ごはんを用意してくださり、仕事の前にランニングもしているそう!シロアムの園には職員の誰よりも早く到着され、仕事をされています。そんな多忙の中で診察もするし、子どもたちの活動最初には公文先生が弾くピアノに合わせて、みんなで歌を歌います。
実際にこの目で公文先生が代表として、医者として、母として、生きている姿を見ているととても感動するし、尊敬します。
シロアムの園のホームページで自己紹介が書かれています。
なぜシロアムを始めたのか
私はケニアで日本人女性が現地にどっぷりと拠点を置き、子どもたちを支援する女性たちを見てきました。その苦労は想像を超えるもので、人生のすべてをケニアの子どもたちにそそぐというのは、相当の勇気と覚悟が必要です。公文先生を勝手にレジェンド入りしてもらいました(笑)
私が勝手に思うケニアのレジェンドを紹介します。
松下照美さん
モヨ・チルドレン・センター(ティカでストリートで暮らす子どもたちへの支援)
早川千晶さん
マゴソスクールを支える会|ケニアの首都ナイロビのキベラスラムで暮らす子どもたち(キベラスラムで学校を運営)
菊本照子さん
マトマイニ・チルドレンズ・ホーム/ジャミー・セルフヘルプ・グループ(ナイロビで孤児院、お母さんを中心として収入向上)
そして、私の中で新しいレジェンドが公文和子先生です。
この本を読むとシロアムの園に行きついた経緯がびっしり書いてあります。医学部時代にバングラディッシュのスタディーツアーに行ったことが大きな一歩でした。東ティモール、イギリスで熱帯小児学を学び、日本で臨床経験、シエラレオネでの活動。のちに、JICAエイズ専門家として、ケニアに来たことが大きな縁です。
「住民のニーズに応えられていない」
私がシロアムの園で、ボランティアをさせてもらうにあたり、初日のブリーフィングの中で公文先生から聞いたことばです。私が最近感じていたことなので、背筋がピンとなるような言葉でした。JICAやNGOでの活動を経験されている公文先生ですが、その中でドナーに資金をもらうための申請書を作成したりしている中でそう感じたようです。ドナーの意向に合わせたり、NGOの能力に合わせた支援をすることは、間違ったことだとは思いませんが、やはり住民と一緒に活動していると疑問に思ったり、本当にやりたいことや有効的なことができないことに歯がゆさを感じてしまいます。
先日、紹介した「アフリカ希望の大陸」でも国際協力がアフリカをダメにしていると批判する章があります。書いてあるほとんどの意見は間違っていないと思いました。私たちが行っていることが住民の生活に向上しているかどうかは私たちの自己満足で、実際住民が感じたことは別です。
私が今までやってきたことは無駄だったのか。でも、NGOでの活動の中でも、保護者と子どもの生活が変化したことをこの目で見ているので、全部が無駄ではないとは確信していますが、私を含めた先進国のエゴがあることも事実です。
住民と一括りせずに、子どもや保護者一人ひとりに向き合った活動をしていくには、シロアムの園やモヨのように現地に基盤をおいて、じっくり向き合うことが必要だと思っています。過去のレジェンドたちは、既存の支援や施設では、考えている活動ができないと思ったから、レジェンド自身が必要な場所や空間を創造することになったのだと思います。
本の中で、公文先生がシロアムの園を始めるにあたり、このように書いています。
私も、私の「友」に癒しを受け、いちばん大切なものを受け取り、素晴らしい人生を送ることができるようになりたい、なってほしい、そんな気持ちで、この事業を「シロアムの園」と呼ぶことにしました。
国際協力の中で、「受益者」「裨益者」とか呼びますが、いつも「友人」「家族」であってほしいなと感じています。友人や家族だから、必要な時に助け合う。私が困っている時は、いつもケニアの人たちが助けてくれて寄り添ってくれました。なので、私も寄り添って生きていきたいと思っています。この公文先生の言葉は私の中に”すーっ”と入っていくものでした。
障害のある子どもの置かれた環境
シロアムの園に子どもを連れてくる保護者の状況はそれぞれ異なります。しかし、子どもを家に置いていけないので、日雇いの仕事ができず、経済的に厳しかったり、自由に動くことが難しい子どもを背負ってマーケットまで何キロも背負って街に行くことが体力的にきつかったり、マーケットや教会で障害のあることをに対して差別を受けたり、保護者と子どもたちが置かれている状況はかなり厳しいです。
ケニアでは、日本よりも、さらにひどい偏見があります。私は、ケニアの児童局でボランティアをしていましたが、子どもが虐待されていると通報があり、訪問してみると障害のある子どもでした。母親しか面倒をみる人がいないけど、日雇いの畑仕事をしに行くには、子どもを家に置いていくしかありません。幼稚園も公立小学校も、障害のある子どもは面倒見れないと断れることがよくあります。そんなお母さんを虐待者として見ることはできません。この子どもに対して、私には何もできることができないと落ち込んだ経験もあります。近所の人や祖父母から「呪われた子ども」と言われて、母親と子どもともに家から追い出されるケースもあります。紹介しているこちらの本でも公文先生は今まで出会った子どものストーリーが書かれています。
MDGで教育のアクセスが改善したと言われ、SDGsで学習の質の改善が取り組まれていますが、障害のある子どもたちはまだ家から出ることすらできていません。社会に完全に取り残された状況にあります。
シロアムにお父さんと一緒に来る子どもがいます。お父さんは週2回子どもを連れてきます。仕事は何をしているのかなと思って公文先生に聞いてみると夜の警備の仕事をしているそうです。お母さんは躁うつ病があり、状態によっては、お父さんが一緒にいて、お母さんと子どもの面倒をみる必要があります。お父さんは夜の仕事をしているので、昼間は睡眠をとらないといけないはずなのですが、1日中働いていることになります。なんてことでしょうか!!日本であれば重度の障害のある子どもも学校に行くのでその間安心して働くことができるし、お母さんも必要に応じて病院でカウンセリングを受けたりすることができますが、そんなサービスはケニアにはないのです!そのようなお父さんを精神的にも、子どものリハビリを専門的にも支えているのがシロアムなのだと思いました。
シロアムの活動
シロアムは、障害のある子どもたちにデイケアを提供しています。宿舎ではありません。朝、シロアムの園のドライバーたちが各家庭に迎えにきて、シロアムの園でセラピーやグループ活動を受けて、ランチ後に家に帰ります。月曜日から金曜日まで決められた日程で子どもたちがやってきます。
シロアムの園に来る子どもたちは、様々な状況下に置かれています。脳性まひ、自閉症、聴覚障害、てんかん、、、。併用していることが多く、半分以上のお子さんがてんかんを持っており、薬の適切な不要が必要になります。
公文先生による診察、作業療法士によるリハビリ、教育が提供されており、こんなに個々に沿って、いろんなサービスを1日に受けられるなんて、子どもたちは本当に恵まれているなと思います。また、曜日によって子どものプログラムが違います。
本書のタイトルでもある「グットモーニングトゥ・ユー」の曲で、シロアムの園の活動が始まります。
8:00 スタッフの礼拝
8:05 準備、打合せ
ドライバーは各家庭にお迎えにいく
9:30 子どもたちをシロアムの園迎える
10:00 プログラムの開始
グットモーニングトゥ・ユーをみんなで歌う
簡単なおもちゃを使って、手や目を使う練習(※曜日や子どもによって異なる)
外で体を動かす
手洗い
※プログラムの間に個人セラピーがあり、作業療法士さんが別の部屋に連れて行き、指導やマッサージがあります
13:00 ランチ(摂食指導)、歯磨き
14:00 子どもたちが帰宅
なんてすばらしい活動なんだ!というのが、私が初日に見学させてもらった時の感想です。プログラム内容も、子どもにどのようになってほしいのか目標をしっかり考えられているというのもありますが、セラピスト、先生、アシスタントみんなが子どもたちの目をしっかり見て笑顔で話しを聞いてくれます。ほとんど子どもが言語でのコミュニケーションが難しいため、様々な工夫をして、子どもが何をしたいのか、なぜ泣いているのか、丁寧に聞いて対応している姿は感動でした。
私は日本の特別支援学校に行ったことがありませんが、ケニアの公立の特別支援学校に訪問したことがあります。教員一人に軽度~中度の障害を持った子どもたちが教室にいるだけで、教員は何もしていませんでした。ただ子どもが教室にいるだけでした。
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教員は特別支援教育を勉強しているけども、スキルが伴っていない
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教員1人に対して、担当する児童が多すぎる
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特別支援教育のための教材がない
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教員のモチベーションが低い
- ケニア政府として特別支援教育に力を入れていない
これからの原因があるのではないのかと個人的に思っています。
現在、本来は政府が全ての子どもたちに教育を提供すると約束しているので、障害のある子どもたちであっても、山の上に住む子どもでも、少数民族の子どもでも、教育を受けられるように、政府が責任を持って、学校を作ったり、教員を育成して派遣すべきものです。しかし、こうした少数派の子どもたちは社会から取り残されています。
今後のシロアム
シロアムの園は、こういった子どもたちに手を差し伸べているのだと思っています。現在、50名程度の子どもたちが決められた曜日にシロアムに来ています。本当は毎日着てケアを受けた方が良い子どももいますが、施設にもキャパがあります。また、入所を待っている子どもたちも50名以上います。
2021年にクラウドファンディングに成功して、新しい土地を購入し、2022年2月現在大きな施設を建設中です。さらに多くの子どもたちがシロアムの園に通うことができ、さらに大きなスペースでのびのびと活動を楽しんでくれることだと思っています。
新しい場所に移り、新しい子どもたちがシロアムの園の仲間となり、笑顔になっていくのが楽しみです。