アフリカ大好きマルチリンガル・りさぴょん(@LisapyonKenya)です。
今日は私がみなさんに知ってほしい間違ったアフリカの子どもの支援について書きます。
ポイントは、
本当に孤児院(児童養護施設)が子どもにとって最善の場所ですか?
これはアフリカだけでなく、日本を含めた世界中の子どもたちに言えます。
なぜ孤児院支援が子どもにとって危険なのか?アフリカの孤児院の現状を紹介します。私は孤児院(施設ケア)をすべてを否定はしていません。子どもにとって、施設はベストな環境ではないということを説明していきます。
目次
世界の児童養護施設に住む子供の80%以上が両親か片親が生きています。
両親がいない孤児はたったの20%。そして彼らも両親がいないというひとつの理由だけでなく、様々に重なり合った複雑な理由で、施設にたどり着いています。
孤児院とは?
孤児院は日本語でいうと、児童養護施設です。戦争で両親を亡くなった子どもたちがあふれた時に作られた施設という起源を持ちますが、今では孤児だけが施設に行くのではないため、児童養護施設と改名されています。海外でも、Orphanage(孤児院)ではなく、Children' home, care home, children protection center 等々呼ばれています。ケニアでは、 Charitable Children’s Institutions (CCIs)と呼ばれます。
児童養護施設には、いろんな形態がありまますが、それはまた今度。(例:児童養護施設児童心理治療施設、児童自立支援施設、乳児院、母子生活支援施設、ファミリーホーム、自立援助ホーム)。
- 公営の孤児院(政府がお金を出しています。)
ケニアでは首都、キスムに政府が管轄する施設があります。職員も公務員扱いです。
- 民営の孤児院(政府以外の団体が作っている施設)
どの国でも孤児院を始めるには政府の許可が必要で、子どもを勝手に預かっていると違法になります。しかし、認可を取れていない孤児院はかなりあります。これは孤児院看板を建てればお金が集まるだろうと考えたひとや海外から何も考えずに初めてしまった危険な行動です。ケニア政府もまったく管理できていません。ケニアでは700ほどあると言われていますが、その中で591は登録していないそうな。
Guidline for the Alternative family care of children in Kenya(2014) から引用
ケニア人友人は政府が把握していないが、1500くらいはケニアにあるのではないかと言っていました。たとえば、隊員時代に一緒に活動していた孤児院は、最初は認可を取れていましたが、更新にお金のかかる書類が必要になったり、規則が変わり面倒になったりして、”無認可”の期間が数年ありました。
民営は欧州を中心とした先進国からの支援が入っていることが多く、ほとんどが海外のキリスト教系です。もちろんムスリム系もあります。日本の支援で有名なのは、照美さんが運営するモヨチイルドレンセンターと、菊本さんが運営するマトマイニ・チルドレンズ・ホームですね。
人数の規模は、20人から500人とか。
最近では孤児院と一緒に学校があり、学校休みだけ実家に帰るような大型施設もあります。これはただのボーディングスクールなんじゃと思いますが、登録は孤児院だったり。100名以上の施設では、二段ベットがずらーと並び、家というよりも寮という方が合っています。
ケニアでも数少ないですが、グループホームを取り入れいる施設もあります。できるだけ、集団生活というよりも家庭に近いように、4-5人の子どもと寮母さん1人で、平屋にする形態です。
SOS Children's Villagesは、international NGOで世界的に広がっているNGOですが、ケニアでファミリーホーム型の施設を運営しています。実際に訪れましたが、子どもの部屋は2つくらいあり、二段ベットがおいてありました。寮母さんもそこに泊まっています。夕食はみんなで食卓を囲み、ゆっくり会話できます。大型施設よりはかなり環境がよいです。はい、もちろんファミリーホーム型はコスパが悪いので、お金目当ての孤児院はやってません。
商売としての孤児院。
残念ながら、世界中にはたくさんのビジネス孤児院があります。子どもは商品です。そのため、不要に子どもに施設を入れてお金を集めるパターンもあります。施設のリクルーターの人が村に行き、「教育を無料で受けられるよ」という甘い提案を保護者に伝え、子どもを遠くの施設に入れて、適切なケアを与えていないというケースです。
チャイルドスポンサーという支援制度がありますね。
その場合、子どもひとりひとりに支援者が付きますが、この制度になったせいで子どもがたくさんいないと支援が集まらないという矛盾も起きています。
岩下さんの「カンボジア孤児院ビジネス」という本は有名ですね。
アフリカの子どもが施設に入る理由。
そう考えるひとが多くいます。ウガンダやケニアで施設に入所した理由を政府が記録して、報告書にしないため、はっきりした数値はありませんが、私の経験上いくつかの原因があります。
保護者の育児放棄は、
(貧困)食べ物がなくて、ストリートに子どもを捨てた。
(差別)障害児だったので、育てるのをあきらめた。
(子育て・結婚)新しい旦那がほしいから子どもが邪魔になった。
(子育て・結婚)子どもができてけど、相手が面倒みてくれなくて。ケニアは中絶が違法なので、仕方なく産んだけど、面倒みたくない。
(子育て・結婚)子どもをみるのに疲れたから、お母さんのところにおいて逃げた。
このような場合、一時保護が必要になります。しかし、家庭の状況を改善できれば、子どもが家族と住める可能性の方が高いんです。
実際に、事例はたくさんあります。ケニアの児童局で働いていたときに、、、
〇家庭訪問を繰り返して、夫婦間の問題を解消して、子どもが家に帰れた。
〇子育てに疲れているお母さんのために、近所に住んでいる叔母さんに協力を求めて、お母さんが精神的にも解決できた。
〇知的障害のあるお母さんが子どもを捨てたが、おばあちゃんにお願いして一緒にすんでもらった。
では、なぜたくさんの子どもが施設にたどり着くのか。答えは簡単です。
〇児童局(児童相談所)のスタッフはいろんな調査や家庭訪問をやるのがめんどくさい!
児童局(児童相談所)は県に1人。4万人住んでいても1人。毎日起こる子どもの問題に対応するのは不可です。また、何度も何度も家族と話しあって、子どもの受け入れを話合うのは時間もお金も必要なんです。職員の交通費はお給料から出さないといけないことも多く、そしたら、施設に入れるのが簡単!
〇施設だと教育無料!
貧しい家庭は、施設に子どもが入ればただで教育を受けられると思っていますので、激貧ではなくても、施設に入れたいと思うんです。これはアフリカにおいての大きな問題です。教育され受けれれば、職につけるかもしれないと思う親が子どもに教育を受けてほしいのは当たり前だから。
孤児院が子どもに与える悪影響とは?
国連総会でも、施設保護がほとんどの子どもたちにとって理想的ではない理由に焦点が当てられています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000018h6g-att/2r98520000018hly.pdf
- 精神的、身体的、知的な発達の遅れ
- 低栄養
- 低IQ、低学力
- 愛着の低さ、愛着障がいの発生度の高さ
- 虐待やネグレクトの高さ
- 交流や刺激の低さ
- ソーシャルスキルの欠如
- 家族、コミュニティ、社会からの孤立
私の修士論文でも書いていて、ここから引用しています。
https://thesis.eur.nl/pub/46633
日本ではこれに加えて、
- 犯罪率、自殺率、早期妊娠率の高さ
- 大学進学率の低さ
- 正社員への雇用率の低さ
が挙げられます。
アフリカで見た孤児院の状況。
上記に挙げた悪影響はどのように起きているのか。
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家族との縁を完全に切る。
どの国でも家族が最小の社会保障です。家族や親族が何かあれば助けてくれて、信頼しています。家族から長期的に離れて育つと、18歳になって施設を出るときに、いわゆる”実家”という帰る場所ところを失います。10年ぶりに帰ってきた食費と学費のかかる息子や娘を歓迎してしてくれるケースはほぼありませんでした。ケニアではある18歳とか高校を卒業した歳になると、実家の敷地内ではなるが、自分の家を持つことが習慣です。しかし、”実家”がない彼らはどこかでアパートを借りないといけません。仕事がないのにアパートをまず借りることできません。
またアフリカでは、家族・親族に仕事を紹介してもらうことが多くあります。おじさんがナイロビに出稼ぎしているので、おじさんを訪ねた。兄弟がビジネスをしているので、お手伝いをしながら、仕事を教わった。施設に長くいればいるほど、家族が施設にいる人たちになりますが、施設長は小さい子どもたちの面倒や新しく入ってくる子どものパパやママでもあります。
スタッフが少ない施設では、面倒を見てくれるケアテーカーが保護者代わりです。しかし、ケアテーカーは掃除に洗濯にご飯尾準備に忙しいので、一人ひとりの子どもとゆっくり向き合う時間はありません。私の”お父さん””お母さん”という存在はいません。特定の人からの愛情がもらえません。愛に飢えた子どもは独占しようとします。
しかし、残念ながら叶いません。愛情の中で信頼を作ることで、安心や人との関係を理解していきます。子どもの発達段階は、年齢によって、獲得するものが違います。しかし、乳児期に会得するはずの「信頼」を得ることができなければ、そのあとの「自律製」「自発性」も育たないんです。
虐待が原因で施設に来る子どもは5歳であっても、この子どもの発達段階を踏んでいないことが多く、施設にきてさらに深刻な発達遅れ・障害に陥ることがあります。
子どもの発達段階と、年齢に応じた課題を理解しておこうより引用
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普通ではない生活。ソーシャルスキルの低下。
施設では、7時朝食パン。昼12時じゃがいも。夜18時ウガリ。
でも普段の生活で毎日夕飯の時間は変わるし、食べるものもその日によって変わりますよね?施設の子どもは毎週金曜日だけはお肉が食べられる生活の中で育つと、その中世間がそうだと信じていまします。
また、日本の施設であった例では、親子でスーパーに買い物に行く経験がなく、育った若者は500円を持たされて買い物に行ってこい!と言われると何もできなかったと。「500円で何が買える価値があるの?」「言われたものはどこに売っているの?」と、困ってしまいました。
ケニアでいえば、家族で冠婚葬祭に参加しますが、施設の子は結婚式にもお葬式にも参加したことがなく、何をすればいいのかわからなかったり。都市にある施設では土地では農業ができないため、大きくなって実家に帰ったときに、畑を耕しておいてと言われても何から始めていいのかわからなかったり。
いわゆる「普通」の感覚がなく、衣食住を誰かから支援される生活では、生きていく生活が限りなく低い状態になるんです。
施設では自立に必要なことを教えてくれない
https://www.businessinsider.jp/post-186526 引用元
施設出身の男性が、施設長を殺害したというニュースを覚えていますか。
施設がかならずしも、すべての子どもにとってベストな環境ではないことは十分にわかってもらえたと思います。
ケニアでは、
Instiotutional care shoulds be the last resort!
としています。施設ケアは最後の選択しでなければならない。そうです。施設自体は完全に否定していません。
保護者の暮らせない社会的な養護が必要な子どもは、 以下の段階を考えていきます。
①家族へ戻るように準備して、家庭状況を整える。
②保護者だった以外の家族や親族が引き取る。
③家族の準備が必要な場合は短期的に里子に出す。
④保護者が放棄して難しい場合は、養子縁組として、子どもを家庭ケアに切り替える。
⑤児童養護施設に入る。
これを考えると、孤児院を支援するのではなく、
- 家庭に子どもが施設に行かないように、家庭を支援するほうがよいと思いませんか?
- 里子や養子縁組を提携している孤児院を支援するほうがよいと思いませんか?
- あなたが支援した孤児院は子どもの利益を優先していますか?
孤児院への支援・寄付は子どもが孤児院に長く住む理由になることは避けないといけません。私を含め、寄付や支援をしたいとき、それが本当の現地の人の生活のベストか、考えていきましょう。